名無しの星
28歳になった。
おかげさまでなんとか漕ぎ着けた28歳。
バンドをやって歌を歌って毎日を過ごす。
そんな僕は友達が少ない。
というより親友と呼んでくれる人は多くない。
28歳になって考えたことはそんな事だった。
そんな自分の人との距離の取り方を整理した。
僕は人間的欠落があまりに多い。
なんで?と思うようなミスも散見されるし、その度自分が嫌になる。
そのくせ、自分の事が大好きだったりする。
そんな変な自己愛故に、人はいつしか自分から離れていくのだろうと、無責任な予感を常に抱えて生きているし、それは心の予防線ともいえる。
僕はしばしば、人に無礼な態度を取ることがある。
こんな自分に来てくれた人をぞんざいに扱う。
この行動がなんなのか最近わかってきた気がするのだ。
自分は安心がしたいのだ。
先に述べたような予感が拭えないせいで、わざとそのような態度をとって、赦された時、はじめて、この人は自分から離れないんじゃないかと考える。
こんな事をしても大丈夫なら、自分の欠落を見せても大丈夫だろうと安心する。
敬語が嫌いな理由も根底にはそれがあるのではないかと思う。
つい、仲良くしたい人(目上の人にも)タメ口を聞いたり、逆もしかりで、敬語を使わないで欲しいと願ったりするのは、そういった安心を感じたいが故なんだろうと思った。
28にもなって、まだこんな幼い思考をしていたんだと気づいた。
だから、きっと、俺を親友と呼ぶ人は少ないのだ。
そんな心をみんな見透かして。
俺は巻き込まれ体質でもなければ巻き込み体質でもない。
俺はまわりをただ、ゆらゆらと漂う幽霊だ。
そんな俺がバンドで歌を歌う。
そんな俺が誰の胸をうつのだろう
ほんとは全然違うところにいるはずのあの星たちが、線で結ばれ名を持ち意味をつけられた。
オリオン座 さそり座 、、、
意味のなかった夜のモニターに、物語を照らした。
俺から伸びる線はない。
ただ、ゆらめいて光るだけだ。
俺に歌える歌はなんだろう。
似たような名無しの星たちにむかって、存在を示すだけならしてもいいかな。
絶えず位置を照らし続けて、光る北極星のように。同じような星たちの目印になるように。
北極星、こくま座の一部なんだって。
しってた?