ヨコタのそれはそれ、あれはあれ。

ヨコタの感じた日々のあれこれ

ただの1日

くぁーと欠伸をしながら起きちょっとギターを弾いた所でどうしてもビールが飲みたくなった。


パジャマのままコートを羽織り、最近1人でよくいく居酒屋に足を運んだ。
この店は1人で行くにはとても雰囲気が良くて、カウンターに座るお客さんはみんなお一人様(?)で来るような、どうにもお酒を飲むには素晴らしいお店である。


ともあれまだ1人でくるのは2回目の僕を、「お、横田くんいらっしゃい。エビスでいい?」なんて聞いてくれるくらいには居心地がいい。

すでに2、3人カウンターにお客さんがいて各々マスターと喋りながらそれをあてにしてお酒を飲んでる状況だった。
誘導されるがままカウンターのはじに座って、エビスを待っていると、マスターが「最近きてくれるバンドマンの子」と他のお客さんに紹介してくれた。

ほどなく自己紹介が始まってみんな地方から来ている人という事がわかった。
電車もバスも乗れなくて困ったという話を出すと、なんだか嬉しそうに笑ってくれた。
カウンターには子供がいて、マスターの子供だと紹介された。


僕、子供苦手だったんですけど姪ができて、姪だけ格別に可愛く見えてしまう、と切り出すとわかるわかると、賛同を得た。

2つ隣に座っているnさんは、子供が朝仕事に行くときに僕も行くと言って離れない息子を可愛くてしょうがないと語った。仕事に行きたくなくなるとも言った。

血が繋がっていると可愛くてたまらないですよね、と相槌を打つと、小学校に行く前に離婚してからはあってないんだよね。と二階堂に口をつけた。





バンドを反対された時に子供が出来てそれが幸せになると色んな人に諭された。


nさんが飲む、水割りのお酒は何を濁したのだろう。
僕の飲むお酒と味は違うのだろうか。


表情からは読み取れなかったが、nさんは久し振りに会いたいなぁと笑った。


僕は両親の幸せの片棒を担いでいれているだろうか。

エビスを飲み干した。




ほどなくしてnさんとの間に新規のお客さんがきた。
彼はsさんだと紹介してくれた。

sさんもまたここの常連だという。


sさんが泥酔で来なくて早い時間にくるのはレアだよ、とマスターが教えてくれた。

調布でよく遊んでるんですねというと、付き合いだけどねとsさんははにかんだ。
身だしなみが整っていて、仕事のできそうな人だった。

sさんが来てからはnさんと、sさんと3人で飲んだ。
バンドをやっていると告げるとsさんはそういう人間は大好きだと言ってくれた。
続けて奥にいたtさん(後にtさんと紹介を受けた)もsさんと同意見だと言う。

どうせ死ぬ身だ、僕の働いているところは高給取りだけど、幸せじゃない人間なんて山ほどいる、とsさんが続けた。


好きなようにやれ、ということだと納得した。


昔、厚顔無恥な友人がいて、彼を羨ましく思った事が記憶をなぞった。


どうせ死ぬ身だ。


独りよがりに生きてみたい。



僕は親の幸せの片棒を担いでいるし、誰かと付き合うとなればその相手の幸せを担ぐことになる。

空になったグラスにsさんがビールを注いでくれた。
なんだかいつもより苦く感じた。

瓶を2つ開けたところで、これ以降のお勘定はsさんが持ってくれることになった。


エビスを頼んでもらい2人で分け合った。
sさんはビールが好きではないと残りのエビスを僕に渡した。


早く教えてくださいよと言うと、いいのいいのと顔に皺を作った。
今度のエビスは苦くなかった。



時刻は10時ごろと記憶している。


多人数のお客さんが入れ替わりした頃僕以外の3人が徐ろに帰り始めた。
みんなと握手してまた会った時はよろしくお願いしますと礼を言った。


お店のライトはよくあるオレンジ蛍光の光で、なんだかとても別れが寂しくなった。
nさんの居なくなった席に目をやると、灰皿には吸殻がいっぱいでそのうちの1つはまだ火が付いていた。


残りのビールを注いでしばらくすると、前回知り合った子が来た。
彼女は荷物を置きながらマスターに緑茶ハイ、と告げるとお疲れ様と僕に挨拶をした。


仕事終わり?と聞くと隣に座りながら頷く。
2人で乾杯をして、他にお客さんの居なくなった店でマスターと3人で喋った。


彼女は僕と同い年で、本当に同じ年かと疑うくらい落ち着いている。
席についてからはお互いの昔話になった。


あまり共通するところはなかったが、かくれんぼ缶けりはめちゃくちゃした、と伝えると彼女もしたと盛り上がった。

マスターはそろそろお店を締め始めていて、島根出身のお客さんはいないなぁと呟いた。

いないでしょうね、と言ったところで無性に地元のみんなに会いたくなった。



別段変わりばえのしない話をして、サービスでお味噌汁を頂いた。とても美味しかった。


彼女も僕も一人暮らしなのでなかなか味噌汁は作らないと言うと、以外と手間がかかるからねとマスターが笑った。



思えば実家では毎日味噌汁が出ていたなぁ。
以外と手間がかかっていたのだろうか。


どうあれ片棒を担ぐには荷が重かった。
僕は生きているけど生きてはいないし、味噌汁の手間を偲ぶ程の想像力もない。

いつか僕も同じように誰かに片棒を担がせる時が来るのだろうか。

お会計は2000円も行かなかった。冷やかしのお客だなと笑った。

家に帰ると時刻が2時な事に驚いた。ちょっとしたタイムスリップだ。




人の歴史に触れたり触れなかったり、暖かかったり冷たかったり。

、、、ラジバンダリ。
そんな1日だった。

おわり。